眠らない島

短歌とあそぶ

2012-01-01から1年間の記事一覧

『眠らない島』 批評会

批評会ご案内 1 日程 2013年 3月3日(日) 13:30~17:00 2 会場 エルおおさか(大阪府労働センター) 2F 文化プラザ 06-6942―1933 http://www.l-osaka.or.jp/ 3 パネリスト 三井修 (塔) 大辻隆弘 (未来) 中津昌子 (かりん…

明治43年秋の啄木  (現代歌人集会春季大会報告 その4)

●43年秋に雑誌に発表した短歌 「創作」10月号 九月の夜の不平 燐寸擦れば三尺ばかりの明るさの中を過ぎれる白き蛾のあり やとばかり桂首相に手をとられし夢みてさめぬ秋の夜の二時 何となく顔がさもしき邦人の首府の大空を秋の風吹く つね日頃好みて言ひ…

明治43年夏の啄木 (現代歌人集会春季大会報告 その3)

● 明治43年夏の啄木の歌 人気なき事務室にけたたましき電話の鈴ぞなりてやみたる 6月13日 するどくも夏の来たるを感じつつ雨後の小庭の土の香を嗅ぐ 6月13日 公園の隅のベンチに二度ばかり見かけし男この頃見えず 7月28日 忘られぬ顔なりしかな…

明治43年4月の啄木 (現代歌人集会春季大会報告 その2)

● 明治43年4月から5月の短歌 瓦斯の火を半時ばかりながめたり怒り少しく和げるかな 4月 7日 いろいろの壜がつめたく列びたる酒場の棚の白き塵かな 4月 7日 死ね死ねと己を怒りもだしたる心の底の暗き空しさ 4月24日 何やらむ穏やかなら目付きして…

明治43年3月の啄木 (現代歌人集会春季大会報告その1)

1 三月の短歌への波動 明日を思ふ心の勇み生涯の落着きを思ふさびしさに消ゆ 3月14日 何時になり何歳にならば忘れえむ今日もおもひぬ故郷のこと 3月14日 心よく人を賞めて見たくなりにけり利己の心に倦める淋しさ 3月19日 非凡なる人の如くにふる…

未来5月号

蜜をうめこむ いきものに蜜をうめこむ月を待ちわたしは朱い肝臓をもつ チャウダーに匙を沈めてうつくしい蠣のからだを押しつぶすのみ 湯にうかぶ木綿豆腐をすくい上げなまなまとして息を吐きあう いびつなる雪の残っている谷をもとめるように水は落ちくる …

歌集『眠らない島』 レポートその5

歌集を出版して一ヶ月が経ちました。 5月28日(月)付け朝日新聞の朝日歌壇、風信で歌集「眠らない島」を紹介していただきました。3行だけですが、 「日常の風景のその先を見つめる。」として 「こころなら聞こえてくるというように向き合ったまま海鳥た…

兵庫県歌人集会会報43号「特集100年後の啄木」

6月の歌人集会のパネリストとして出席することになりました。 今回の会報に短い文を掲載していただきました。 「啄木100年」 解体から創造へ 明治四十一年六月二三日深夜から、二五日深夜にかけての二日間に啄木は実に二五〇首余りの歌をノートに書きつ…

歌集『眠らない島』レポート 4

「ひばりありがとうほととぎすありがとう手を振りながら年老いてゆく」 歌集を出してから、たくさんの方がお手紙やメールをくださいました。ほんとうにありがとうございます。 それぞれの方が、好きな歌をひいてくださいます。嬉しいかぎりです。その中でも…

兵庫県歌人クラブ新人賞受賞作品

蛍のからだ 指先がはなびら零しているでしょう遅延証明さしだす指の 放課後の鞄のなかで受信するいちばん明るい星のかなしみ 北壁に並べおかれた自転車はひとつ倒れてつぎも倒れる 冷えた指をすべらせながら打ち倒す敵がそのまま友達の数 ゆるゆるのジャージ…

兵庫県歌人クラブ新人賞

今日は、兵庫県歌人クラブ新人賞の授賞式でした。 今年初めて応募し、この賞をいただけてほんとに幸運でした。 歌集をだしたところでもあり、ご褒美をいただいた気分です。 兵庫県歌人クラブの皆様、ありがとうございました。 今日は授賞式のあと、「短歌に…

歌集『眠らない島』ができました

やっと手元に歌集がとどきました。 中西啓子さんの紫をベースにした表紙絵がしずかな美しさを放っていて、思わず抱きしめました。 ぱらぱらとページをめくりながら、目に入った歌をまるで他人の歌のように読んでいます。 本になると、すました顔になり、自分…

歌集「眠らない島」 レポートその3

帯文の案がとどきました。 色は紫に決めました。 表紙絵と雰囲気があっていて、引き締めてくれます。 文章は、加藤治郎先生に書いていただいた跋文からの引用です。 加藤治郎先生の跋文は、とてもわかりやすくて丁寧な解説です。 たくさん、歌を引用してくだ…

歌集「眠らない島」 レポートその2

用紙の見本が届きました。 紙の模様や色のひとつひとつに美しい名前が付いています。 「さざなみ」「せいじ」「さくら」このあたりは親しみ安い感じ。 「わまわなぐさ」というのはどんな草?なのでしょうか。 はじめてきく不思議な名前にひかれます。 見本を…

歌集「眠らない島」 レポートその1

第一歌集「眠らない島」の表紙絵ができあがりました。 切り絵作家の中西啓子さんに作っていただきました。 色遣いには、和紙を使った柔らかい色合いです。 静かな雰囲気が気に入っています。

未来 3月号

いただきの椅子 いただきに置かれていった椅子は白い棺のように運ばれてきた 月蝕のおわったあとのはなやぎにローズマリーはつやめいている 北窓に雲をながめている猫のうしろをときおりあなたが過ぎる オムレツをひかりのように裏返すここは空ではないので…

未来2月号

鎮めるちから ここだった 歌を集めている本の日の暮れ方のあかい湿原 若い雲が毛羽立ちながら動くとき深いところの雲にゆく鳥 あかつきの闇のむこうをしわぶいて男がとおりすぎるまでの間 半欠けの月へと汚れた黄の花をアワダチソウは持ち上げている ピクル…

未来  1月号

リコリスの茎 中秋の月はほどよくはぐらかす待たれていながら青のかたまり ささがきの牛蒡をさらす秋のみず つるんとあなたが毀れてしまう 月あかりにサンダル履きでさやさやとキャットフードを提げてくるのね リコリスのまっすぐな茎つめたくてあなたがきら…

宮廷歌人 武者小路実陰のうた

近世宮廷歌人 武者小路実陰のうた 岩尾淳子 明治二六年の淺香社に始まって、和歌革新運動はそれまでの旧派の和歌を徹底的に批判するなかで近代短歌を立ち上げてきた。明治三〇年代は『明星』に代表される新派の時代のようだが、実際には明治四〇年頃まで、堂…