眠らない島

短歌とあそぶ

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大森静佳 『カミーユ』

狂うのはいつも水際 蜻蛉来てオフィーリア来て秋ははなやぐ 歌集を読み始めて、深く掘り込まれた奥行きのある歌に揺さぶられるような眩暈を覚えた。歌の数は240首と多くはないのにその重量感は圧倒的だ。一首ずつに、陳腐な言い方をすれば魂が捻じ込んで…

兵庫県歌人クラブ合同批評会 岩尾淳子「岸」

去る5月19日(土)に、兵庫県歌人クラブ主催によって、岩尾淳子「岸」、伊藤敦子「蝶道」の合同批評会が行われた。司会は尾崎まゆみ。「岸」のレポーターは小黒世茂、「蝶道」のレポーターは黒崎由紀子。それぞれふたつの歌集についてコメントを行った。 …

近代短歌を読む会 第16回 北原白秋 「雲母集」「雀の卵」

この会を始めて、二回目に白秋の「桐の花」を取り上げた。あれからもう二年。今回からふたたび白秋に帰る。 北原白秋は私の恩師だった米口実の師だった。米口先生は、おりおり白秋のことを語ったけれど、それはなかなか複雑な思いだったようだ。あるときは、…

近代短歌を読む会 第15回 「つきかげ」

昨年の秋から読み継いできた斎藤茂吉も今回で最後。なんだか名残惜しい気がする。どの歌集にも秀歌があるが、私としては昭和にはいってからの歌集が断然おもしろいように思える。「赤光」は感覚的な歌には引かれるが、「死にたまふ母」や「おひろ」あたりは…

近代短歌を読む会 第14回 斎藤茂吉「白き山」

今回は、前回の反省にたち「白き山」一冊に鑑賞を集中することにした。「白き山」は茂吉64歳から65歳までの作品から構成されている。この2年弱の期間でありながら800首を超える作品を歌集に収めている。敗戦で意気消沈していたと言われる時期である…

山川藍 『いらっしゃい』

大根ともっと仲良くできたらと思う炒めたりしないまま この作者はどこから言葉を出してくるのだろう、こんな素裸なままで。おそらくは言葉は選ばれているのではあるが、生な心とほとんど距離がない。まるで蒸留水のように無菌状態の言葉は、読むとそのまま読…