永田愛 『LICHT』
今日は久しぶりにあたたかな一日。
冬の日差しを浴びた木がみたくて公園まで歩いてきた。
透き通るようなヒマラヤ杉がまっすぐに空を突き刺していて、おもわず天を仰いだ。
ひかりはくまなく地上にゆきわたっている。
永田愛の『LICHT』を開いた。LICHTはドイツ語で光のこと。
表紙が黄色が木漏れ日のようで、指に触れたらほっとする。
歌に使われている言葉がやわらかで寄り添ってくるようなぬくもりがある。
『LICHT』から引く
森からは遠く離れている町の 森へとつづく道を知りたい
飲みかけの水を机に置くときのペットボトルのおもてのひかり
触れたらばたちまち解ける春の雪あいたいひとは遠くに暮らす
啼く空をなくせば雲雀もさみしいにちがいないってあなたは言った
ひまわりの写真を撮りに外へ出るアンクル丈のデニムを履いて
北岸に暮らしていても晴れた日は眉山が見えて窓に呼ばれる
祖母だけが撫でてくれるよ頼りなく暮らす大人のわたしのことを
うしろへと移る景色にトンネルや樹の塊がときおりあって
『LICHT』より
どの歌にも、遠く離れたものへのあこがれや祈りがひびいている。
あかるさのなかのさみしさが、うすい光のように肌に触れて来きて、
かえって読む者を安らぎに導いてくれる気がする。
5首目、6首目、8首目には動きがあり、やさしく景色が見えてきて
それが歌集に一筋のひかりを挿しこんでいる。