眠らない島

短歌とあそぶ

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

秋月祐一「迷子のカピバラ」 書評

眠れない夜にきみから教はつた世界でいちばん長い駅の名 「世界でいちばん長い駅の名」が実際にどういう名なのか、具体性は外されている。固有名詞を出さないことで、どこか寂しさも併せ持つはるかな駅への想像をかき立てられる。「駅」ではなく「名」であ…

堀合昇平「提案前夜」  書評

あけのこる月のひかりに染まりつつ艶やかに不燃物のふくろは 人々の去った街に不燃物の袋が転がっている。ゴミというすでに意味を失ったものが月の光に照らされて、生々しい存在感をもって現れる。夜明け前の都市の風景はなんと廃墟に似ていることか。それ…

大森静佳 「てのひらを燃やす」

大森静佳の第一歌集「てのひらを燃やす」を読んだ。第一章巻頭は角川短歌賞受賞作「硝子の駒」。この連作は「私」という視点がはっきりとあり、その視点を通して感情が丁寧に描かれていく。それは恋人と過ごしてゆく時間や景物であり、独特の陰影をつけた表…