眠らない島

短歌とあそぶ

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

虫武一俊 第一歌集 『羽虫群』

ゆるしあうことに焦がれて読みだした本を自分の胸に伏せ置く ことばっていいなあと虫武一俊『羽虫群』を読みながらつくづく思った。言葉にしたとき、最初の意味は変わってしまうというけれど、それでも世界とゆるしあうことを拓くのは言葉なのかもしれない…

藤川弘子 第五歌集 『夏の庭』

花終へてなほ匂ひ立つラベンダーは庭草を引くわれのかたへに 水甕叢書に入っている藤川弘子の『夏の庭』は初夏の風が吹き渡っているようなみずみずしさが溢れている。一首、一首を呼吸するように無理なく歌い上げている。修辞にあまり心を砕かず、率直な歌い…

『灯船』2号

『灯船』第2号を読んだ。まず、藤野早苗の時評「詠まれたもの、読んだもの」に注目した。藤野はラカンの文章を引きながら短歌の口語化に警鐘を鳴らす。 実は「わかる」ということはコミュニケーションの可能性を閉じることに危険を孕んでいると言っているの…

川端柳花 『おとうと』

先日、知人から大阪文学学校の機関誌『樹林』六月号をいただいた。そこに掲載されている川端柳花『おとうと』を読み、長くその印象が消えることがないので、少し感想をまとめておこうと思う。 知覚は世界との媒体と言われるが、本当はそうではなくて世界そ…