眠らない島

短歌とあそぶ

歌集『眠らない島』レポート 4

「ひばりありがとうほととぎすありがとう手を振りながら年老いてゆく」
 
 
 
歌集を出してから、たくさんの方がお手紙やメールをくださいました。ほんとうにありがとうございます。
それぞれの方が、好きな歌をひいてくださいます。嬉しいかぎりです。その中でも一番多く引用されるのがこの歌です。
 
この歌は、特にわかりにくいところもなく、気持ちがそのまま言葉になり、気がつけば歌のかたちになっていた作品なので自分では意外でした
 ただ、この作品には忘れることのできない人があります。笹井宏之さんです。未来誌上に掲載されたとき、笹井さんはいちはやくこの歌にコメントをつけてくださいました。
 
笹井さんは「ぼくもこの歌みたいに年をとれたらいいなあ」と最後に結んでいらっしゃいました。それは、遠い夢を語るような口調でした。そして笹井さんはその半年後、この世を去っていかれました。笹井さんには老いることさえ許されていなかったんだと思うと胸を衝かれるようなかなしみがきました。
 
 思えば笹井宏之さんはずっと、この歌のようこの世のすべてに「ありがとう」と言っていらした気がします