眠らない島

短歌とあそぶ

2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

佐藤羽美「ここは夏月夏曜日」

セーラー服の女子高生が赤い紫陽花の上で寄り添っている表紙絵。そこに降る甘やかな雨の匂いに誘い込まれて初々しい世界に誘われるのかと期待すると、こっぴどく裏切られる。かなり多くの歌数を、読みやすく物語風に構成している。その物語の深淵にのぞいて…

米口實 「惜命」

「呟」の主宰者であった米口が今年1月に急逝した。 歌集の原稿を預けたまま、ついに世に出るのを見ることはなかったことが惜しまれる。91歳であった。 米口実は大正10年に、兵庫県赤穂市で生まれている。その後、浪速高等学校に進み、北原白秋の主宰す…

小谷博康「夢宿」

歌集のなかに夢が次々と現れ、きがつけば異次元に連れ去られる。 過去や未来、さみしい山村、あの世や異類の世界にまで足を運び、夢を旅をしているような不思議な感覚に誘われる。そこでは現実の窮屈な自意識から解き放たれ、原初にたちもどらせてくれる。 …