眠らない島

短歌とあそぶ

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

谷とも子 第一歌集 『やはらかい水』

やはらかい水を降ろしてまづ春は山毛欅の林のわたしを濡らす このたび、「未来短歌会」の歌友である谷とも子の待望の第一歌集が出版された。 谷とも子の歌は、今まで折に触れ読んできた。読むたびに様々な表情を見せてくれるその歌風や題材の多彩さは大きな…

小谷博泰 第10歌集 『シャングリラの扉』

散り急ぐ並木の道を歩みきて堂島でホットサンドを食べる 小谷博泰第10歌集『シャングリラの扉』が出た。第9歌集『うたがたり』は2016年に刊行されているのでその間、わずか一年。その前の第8歌集『昼のコノハズク』も2015年に出ているので、こ…

大室ゆらぎ歌集 『夏野』

春の雨ゆふべに餓ゑてゆでたまごふたつを蛇のやうに吞み込む 大室ゆらぎ歌集『夏野』を読んだ。あとがきに。265首とあったので、驚いてしまった。読み終わった充足感が尋常ではない。圧倒的な世界の深さと美しさ、そして怖さの重量感に酩酊してしまった。…

白井健康歌集  『オワーズから始まった。』

天竜川を越えてひかりを払いのけ橋からぼくを覗き込んでる 巻頭に挙げた歌に立ち止まった。一人称で歌い出されていると思い込んで読み下すと、下句で、いきなり「ぼくを覗き込んでる」となり、ぐらりと感覚が揺さぶられる。では天竜川を越えてきたのは何だ…

遠藤由希 第2歌集 『鳥語の文法』

入り組んで降る雨のなかひとすじのさみしさは貫けり怒りを 葉にならず星にもならずムクドリは集いて夜ごと糞を残せり 読み始めて、身動きのとれない圧力を感じた。作者と、作中の主体と、読者である私がストレートにパイプで連結されて、強い勢いで顔に水が…

「上終歌会 01」を読む 続き

ふゆごもりだれにもわからぬことだけをわかることとし手を掴む夢 仲西森菜 自意識の世界を、リアルに語っている。結句がとてもリアルで利いている。 どちらかと言えば乾いている君に月の明かりも近づいてくる 中村ユキ ゆっくり、溜ながらはいってくる文体が…

「上終歌会 01」

今日、帰宅すると、郵便受けに可愛らしい冊子がとどいていた。「上終歌会 01」とある。奥付には「協力 京都造形芸術大学 文芸表現科」。永田淳さん主宰の歌会か。さわやかな表紙絵に誘われて、つい最後まで読んでしまう。連作10首と個性的なエッセイ。若…