眠らない島

短歌とあそぶ

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

原田彩加 『黄色いボート』

今日何を食べようかなあ生きているばかりの夜にすれ違う人 この歌に出会ってなんともいいようのない心の震えを感じた。それは感動といえば大げさになってしまう。さみしさや悲しさ、それもあるのだけど、それだけではない。今までこんなふうには言えなかっ…

田村広志 『岩田正の歌』

田村広志の『岩田正の歌』を興味深く読んだ。この本によって紹介され、丁寧に鑑賞されることで初めて岩田正の歌の魅力に触れた気がした。 ただ、興味深かったのは岩田正の思想的経歴をまとめた章である。昭和30年代の政治の季節の退潮ととともに、前衛短歌…

三田村正彦 第三歌集 『無韻を生きる』

スプーンの光る秋の日なだらかな坂道のやうなる気分 日常に流れてゆく時間をあるいは感情を、等身大のままの言葉でさしだすとき、こんなに自由に歌える。そんな清涼感を感じさせられる歌集だ。必要以上に、美化しない、あるいは、脱力しずぎない、そして諧…

田丸まひる 『ピース降る』

こころには水際があり言葉にも踵があって、手紙は届く 歌集をとおして言葉がこころの邪魔をしていない心地良さが通っているように思えた。とても気持ちの風通しがよい。何度か読んで、そのわけがなんとなく分かった。そのひとつには、切迫した自意識が少し後…

詩誌 『時刻表』 創刊号

神戸在住の詩人である、たかとう匡子が責任編集して雑誌『時刻表』が創刊された。20人余りの同人の作品が若々しく新鮮で楽しい。 ざっと目をとおしたばかりで、まとまった感想も書けないが、印象にのこったフレーズをメモしてみた。ずいぶん的外れなコメン…

寺島博子 第四歌集 『一心の青』

わがきのふけふにかかはることにして在りて在らざるほどか苦悩の 最近、文語と口語について考えたり、話したりする機会があり、気持ちがそこあたりに止まっていた。文語の効用とか、口語の特性とかいわれたりするが、結局はどちらも言葉であるからには、そ…