2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧
霧晴れて紀州の山に会へる日は海越えて白い封筒がくる 三好美奈子さんは今年六月で米寿を迎えられた。三好さんとは亡き米口實先生の主宰されていた「眩」の勉強会でたびたびご一緒した。先生の辛辣な批評にも一歩もひかず、刻苦勉励されていた姿が印象的で…
『近藤芳美論』 大島史洋は自分の第一の師は近藤芳美だと明言している。若くして「未来」に入会し、近藤芳美と岡井隆という二人の個性的な先輩の影響を直接にうけながら、長く自分自身の歌を模索してきたことであろう。そしてその間、半世紀にわたって、近藤…
石材展示場無人のひるにして何も彫られざる石碑はそびゆ 川本浩美という歌人については何も知らなかった。初めて読むのが、遺歌集ということもあってか、つい感傷的になってしまうのであるが、読み始めるとそういう甘い感傷の入り込む余地はなかった。抑制さ…
このたび、加藤治郎第八歌集『しんきろう』を読み直してみて、新鮮な衝撃を感じた。それは、どういうことか、整理のつかない思いでいたが、なんとなくやり過ごしてしまうのは惜しいので、拙いが言葉にしておきたいと思う。 それは、一言でいうと、「文体」…
『迷子のカピバラ』について、レポートを発表する機会があり、もう一度読み返すことができた。その際、この作品群の虚構性について少し考えを深めてみた。 虚構とひとことでいっても手法はさまざまである。この歌集についていえば、「境界のずらし」という…
岸原さや 第一歌集「声、あるいは音のような」が話題の新鋭短歌シリーズより出版された。岸原さやは「未来」加藤選歌欄の歌友であり、入会以来互いに切磋琢磨してきたあいだがらである。当然、未来誌に掲載されてきた岸原の歌は毎月読んできている。しかし…