未来 1月号
リコリスの茎
中秋の月はほどよくはぐらかす待たれていながら青のかたまり
ささがきの牛蒡をさらす秋のみず つるんとあなたが毀れてしまう
月あかりにサンダル履きでさやさやとキャットフードを提げてくるのね
リコリスのまっすぐな茎つめたくてあなたがきらい 言わないけれど
落ちながらはげしく声を上げている一羽は秋の雲より落ちる
この虹はほっといていい あっけなくおとなになると死にたくならない
河口からペットボトルは尾を引いて海へでてゆく水の日向を
持ち主の不明のボートは逆さまに吊されているしろい歳月
川波のゆるい起伏にうごきつつ小舟はひねもす繋がれている
紫陽花のすがれた花を切り落とす すなわち今朝の重さで落ちる