眠らない島

短歌とあそぶ

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

嵯峨直樹 第三歌集 『みずからの火』

くらぐらと水落ちてゆく 側溝に赦されてあるような黒い水 この歌に出会ったとき、都会という空間がなまなましく立ち現れ、そこでうごめいているわれわれは「赦されてある黒い水」なんだという妙によろこばしいような実感をもったことを記憶している。この歌…

千原こはぎ 第一歌集 『ちるとしふと』

これ以上ない完璧な輪郭を生み出すことからはじまる仕事 千原こはぎさんのプロフィールにはイラストレーター、デザイナーとある。高校に勤めていたころ、女子高校生のなりたい職業のベスト3には入っていた気がする。それくらいだから、私にとってもなんとな…

辻聡之  第一歌集 『あしたの孵化』

あれは滝を見にゆく人の列そしてこれは遠くから見るぼくの夢 辻聰之の第1歌集が出た。ひそかに待ち望んでいた歌集である。辻の歌が好きで、その良さをどう伝えてよいか困ってしまう。軽快でエスプリが利いているけど、ひけらかさない。大きな声では主張せず…