眠らない島

短歌とあそぶ

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

江戸雪 第五歌集 『声が聞きたい』

ありがとうはきれいな言葉うつむいて青い手袋ゆっくりはめる 江戸雪といえば、強い情念を抱えた歌人という印象がある。今回の歌集でもやはり強い自我意識が歌集全体に量感をもたせているように思う。ただ、今までの歌集とちがって言葉と感情がうまく絡み合…

岩田亨 『斎藤茂吉と佐藤佐太郎』

短歌に多少とも本気で関わりをもとうとするならば、斎藤茂吉と佐藤佐太郎という二人の巨星の洗礼を受け、そしてどう越えていけるのかは避けては通れない。近代短歌史に歴然と輝くふたりの個性はそれぞれの短歌論のなかに展開されているもののその全体像に迫…

楠誓英 第一歌集 『青昏集』

楠誓英は第1回現代短歌社受賞した若き歌人である。賞を受賞し、歌集が出るということで、楽しみにしていた。読み始めて重い衝撃が走った。 大地震に崩れた家の天井に十二の吾がまだ住んでゐる 亡き兄がそこにゐさうな気配して父の鞄に声かけてみぬ 来年で阪…

石川美南×服部真理子 「ノーザン・ラッシュ」

夏のギフト夏に売られる正しさの寝息でグリーンイグアナ眠る 服部真理子 眠りたくなつて眠つて目が覚めて食べる排泄する歩き出す 石川美南 石川美南さんと服部真理子さんによる「ノーザン・ラッシュ」は二人で爬虫類喫茶に行き、短歌を作るという楽しい企画…

永守恭子 第二歌集『夏の沼』

どこまでも伸びてゆく雲追ひかけて胸に小さきこころざし生る 最近、作者独自の美意識や世界観により緻密に構成された歌集を読むことが多かった。そんな中で手元に届いたのが結社「水瓶」所属の永守恭子さんの「夏の沼」であった。ささやかな日常を詩的に昇華…