眠らない島

短歌とあそぶ

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

五十子尚夏 第一歌集『The Moon Also Rises』

遠雷に微か震える聴覚のどこかにあわれバイオリン燃ゆ 五十子尚夏の『The Moon Also Rises』には多彩なノイズが溢れている。華やかな固有名詞の氾濫はこの作者が世界から聴き集めた美しいひかりの残響かも知れない。それは、世界をきららかに演出してみせる…

加藤治郎第11歌集『混乱のひかり』

栞紐はねのけて読む冬の朝 歌はひかりとおもうときあり 加藤治郎の第11歌集『混乱のひかり』はタイトル通り、ひかりに充ちている。冒頭に引いた歌には作者の歌に託する希望がひかりを生んでいる。混沌とした現代社会の現状に言葉で切り込むように挑みつつ…

近代短歌を読む会 第23回 齋藤史『秋天瑠璃』

いはれなく街の向こうまで見えてくる さよならといふ語をいふときに 齋藤史『秋天瑠璃』 「近代短歌を読む会」も今回で23回になる。 今年の5月から齋藤史の『魚歌』、『ひたくれなゐ』を読み継いできた。今回はその三回目にあたり『秋天瑠璃』を取り上げ…