眠らない島

短歌とあそぶ

未来 3月号

      いただきの椅子
 
 
いただきに置かれていった椅子は白い棺のように運ばれてきた
 
月蝕のおわったあとのはなやぎにローズマリーはつやめいている
 
北窓に雲をながめている猫のうしろをときおりあなたが過ぎる
 
オムレツをひかりのように裏返すここは空ではないのでしょうか
 
おまえは猫なのだから水を飲みひとりぼっちで遊んでおいで
 
川霧はかたちをかえて下流へと退いてゆくみずからの速さで
 
こんなにも多くの鳥がだまりこむ川端通りのながい冬空
 
あとをひく二羽の鴉のなきごえが冬にちかづく夕やみを塗る
 
朝霧はよろこびらしいホームから鳥はまなこをあけて飛びたつ