眠らない島

短歌とあそぶ

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三﨑澪   『日の扉』

花びらの盛り上がりまた盛り上がり押し出されくる幾片あはれ 『日の扉』作者は、奥付によると、1920年生まれ。今年で97歳になる。読んでからその年齢を確認して、驚きを禁じ得なかった。よくありがちな、「老い」に凭れた〈自在〉な歌ではない。読むも…

鈴木美紀子 第一歌集 『風のアンダースタディ』

夕暮れに流されそうだティファールの把手を握りしめているのに 鈴木美紀子は未来短歌会の加藤治郎選歌欄に所属している。このたび書肆侃侃房より歌集を上梓した。この作者の第一歌集を待っていたものは少なくないだろう。鈴木美紀子の歌には一首、一首に物…

近代短歌を読む会 第9回 前田夕暮『水源地帯』

前田夕暮 『水源地帯』を読む 〇参加者の三首選 うしろにずりさがる地面の衝動から、ふわりと離陸する、午前の日の影 自然がずんずん体のなかを通過するーー山、山、山 虹、虹。眼前数メートルの距離に迫って、窓硝子をすれすれにとぶ虹! レンズのなかの明…

藤井啓子 第一句集 『輝く子』

夜は星のために湧きたる清水かな 藤井啓子句集『輝く子』が出版された。藤井啓子は「ホトトギス」同人であり、平成7年には日本伝統俳句協会新人賞を受賞し、また朝日俳壇年間賞を二度にわたって受賞している実力派だ。今回はこの作者の第一句集であり、実に…

第8回 土屋文明 第一歌集 『ふゆくさ』

土屋文明 第一歌集『ふゆくさ』を読む 〇参加者の三首選 夕ぐるる丘の野分は草吹きて榛の木をふきていづくともなし 霜とけてぬれうるほへる黒き土土はひろがるゆふぐれの国 馬の湯に居る馬七つ日照雨に背のかけむしろみなぬれてあり 白楊の花ひそみ咲く木に…