眠らない島

短歌とあそぶ

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

明治43年秋の啄木  (現代歌人集会春季大会報告 その4)

●43年秋に雑誌に発表した短歌 「創作」10月号 九月の夜の不平 燐寸擦れば三尺ばかりの明るさの中を過ぎれる白き蛾のあり やとばかり桂首相に手をとられし夢みてさめぬ秋の夜の二時 何となく顔がさもしき邦人の首府の大空を秋の風吹く つね日頃好みて言ひ…

明治43年夏の啄木 (現代歌人集会春季大会報告 その3)

● 明治43年夏の啄木の歌 人気なき事務室にけたたましき電話の鈴ぞなりてやみたる 6月13日 するどくも夏の来たるを感じつつ雨後の小庭の土の香を嗅ぐ 6月13日 公園の隅のベンチに二度ばかり見かけし男この頃見えず 7月28日 忘られぬ顔なりしかな…

明治43年4月の啄木 (現代歌人集会春季大会報告 その2)

● 明治43年4月から5月の短歌 瓦斯の火を半時ばかりながめたり怒り少しく和げるかな 4月 7日 いろいろの壜がつめたく列びたる酒場の棚の白き塵かな 4月 7日 死ね死ねと己を怒りもだしたる心の底の暗き空しさ 4月24日 何やらむ穏やかなら目付きして…

明治43年3月の啄木 (現代歌人集会春季大会報告その1)

1 三月の短歌への波動 明日を思ふ心の勇み生涯の落着きを思ふさびしさに消ゆ 3月14日 何時になり何歳にならば忘れえむ今日もおもひぬ故郷のこと 3月14日 心よく人を賞めて見たくなりにけり利己の心に倦める淋しさ 3月19日 非凡なる人の如くにふる…

未来5月号

蜜をうめこむ いきものに蜜をうめこむ月を待ちわたしは朱い肝臓をもつ チャウダーに匙を沈めてうつくしい蠣のからだを押しつぶすのみ 湯にうかぶ木綿豆腐をすくい上げなまなまとして息を吐きあう いびつなる雪の残っている谷をもとめるように水は落ちくる …