蜜をうめこむ
いきものに蜜をうめこむ月を待ちわたしは朱い肝臓をもつ
チャウダーに匙を沈めてうつくしい蠣のからだを押しつぶすのみ
湯にうかぶ木綿豆腐をすくい上げなまなまとして息を吐きあう
いびつなる雪の残っている谷をもとめるように水は落ちくる
けだものの匂いに清められている水は仰向きながら流れる
どの粒もおさない雪におなりなさい紺青の夜のふかい高みに
うすぐらい夢に立っている父のうしろに結露している引き戸
低い雲が動こうとせぬ 背中から力が抜けるように暮れゆく
走りくるみぎわを波は抱くようにしてその果てをくずれるばかり
つやめいた黒マジックの叔父さんの文字は流れる冬の手紙を