2012-03-13から1日間の記事一覧
いただきの椅子 いただきに置かれていった椅子は白い棺のように運ばれてきた 月蝕のおわったあとのはなやぎにローズマリーはつやめいている 北窓に雲をながめている猫のうしろをときおりあなたが過ぎる オムレツをひかりのように裏返すここは空ではないので…
鎮めるちから ここだった 歌を集めている本の日の暮れ方のあかい湿原 若い雲が毛羽立ちながら動くとき深いところの雲にゆく鳥 あかつきの闇のむこうをしわぶいて男がとおりすぎるまでの間 半欠けの月へと汚れた黄の花をアワダチソウは持ち上げている ピクル…
リコリスの茎 中秋の月はほどよくはぐらかす待たれていながら青のかたまり ささがきの牛蒡をさらす秋のみず つるんとあなたが毀れてしまう 月あかりにサンダル履きでさやさやとキャットフードを提げてくるのね リコリスのまっすぐな茎つめたくてあなたがきら…
近世宮廷歌人 武者小路実陰のうた 岩尾淳子 明治二六年の淺香社に始まって、和歌革新運動はそれまでの旧派の和歌を徹底的に批判するなかで近代短歌を立ち上げてきた。明治三〇年代は『明星』に代表される新派の時代のようだが、実際には明治四〇年頃まで、堂…