眠らない島

短歌とあそぶ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

たなかみち 第二歌集 『具体』

休止符のやうな曲線立たしめて死よりも静かに青鷺一羽 たなかみちさんは尼崎在住の歌人であり、兵庫県歌人クラブ幹事をなさっている。歌は、歌人クラブの会報や年間歌集などでお見かけしてきたが、とても平易な言葉のなかに清冽な抒情が感じられる作品が多く…

川本千栄  第三歌集『樹雨降る』

いつも誰かとつながっていたいという気持ち無くて見ている片脚の鷺 川本千栄第三歌集『樹雨降る』を読んだ。川本千栄といえば論客というイメージが強くある。歌は残念ながら第一歌集『青い猫』第二歌集『日ざかり』を通して読む機会がなかった。断片的には目…

岩尾淳子  『いちどだけ生まれた』

ここで自分の本の紹介をするのは久しぶりで少々照れくさい。 私の父は今年八十六歳。七十年前は十六歳であった。昭和二十年、既に戦局は絶望的であったにもかかわらず、無謀にも少年志願兵として自らすすんで入隊している。そのころのことについて、父はほと…

春野りりん 第一歌集 『ここからが空』

ふくびくうを花野としつつ朝の気は身のうちふかくふかくめぐりぬ 春野りりん第一歌集『ここからが空』は、からだの全ての筋が解きほぐされて浮かび上がるような心地良さに満ちている。自己の存在を、自意識の枠から解き放ち自然や地球さらには宇宙まで包含…