「柊と南天」1号
「柊と南天」1号を読んだ。
0号を読んでからもう一年。着実に前に進んでいる感じが羨ましい。
この冊子は塔の中の結社内同人誌。前回は5名の作品で今回は11人
塔は1000人を超す結社だから、なかなか目をとおして読むことは難しい。名前を知っている方をさがして読むくらいが関の山。しかし、このくらいの冊子だと、すっとみんな読んでしまう。読者にとどく適量の内容ということを考えさせられる。
今回の注目点はなんといっても永田淳さんの23歳の作品が読めたこと。「塔」に掲載された1997年3月号から10月号までの43首。その若々しさとひりひりした感性に圧倒されながら読み終わった。やはり青春歌は輝いている。
印象に残った歌をあげておく。
〇永田淳 特別寄稿
常に常に未知の領域埋めゆけば夜更けのパソコンほのかに蒼し
歯科医師を常に見上げて治療受く下顎少し産毛が煙る
部屋のキーがいつまでもポケットに沈んでいる夜に飲むことを止めず
紫煙のみぼくと君とを隔ておりその唇までが遠き理由
実家に戻る度 父のみせる精一杯が判りつつある齢に近づく
〇メンバーの作品から
乙部真美
ユリノキを鳴らして過ぎるそよ風をいちばん後ろの席で見ていた
中田明子
裏は見ず表に触るることもなくみている十一面観音の足
加茂直樹
長き坂下り始めたるばかりなり移ろふ景色楽しみゆかむ
山﨑大樹
無期囚の仮釈放の事務を執る事件記録の昭和をめくり
安倍光恵
いきなり、ミラノカツレツ揚げてよと娘に言われカツを揚げてる
吉田達郎
太陽の塔つらぬける原つぱをゆつくり歩む0にぞ還る
水野千尋
新緑のひかりあふるる葉のいちまい同じかたちの背をもちおり
丘村奈央子
暗がりの道で聞き入る音楽が一番透明で脳に近い
池田行謙
群青の蟻が一匹描かれていた額縁を剥がしてみれば
永田淳
紅のピノノワールに漕ぎ出すいまだ明るき夏の夕べを