眠らない島

短歌とあそぶ

未来9月号

線量の増えゆく空を鳥たちは朝をよろこび鳴いたであろう
 
あの日より前にも雪は舞いおちて海に戻ってゆけばよかった
 
舟人はいくども目覚めているにしろ昨日の唄がまだおわらない
 
ああ昔、夜空に舟が燃え上がり、それは、と人は語るのだろう
 
橋は架け直され岸はふたたび築かれるのか、むろんそうだが
 
流れだすことのできない水はあり留まったまま、ただ苦しいと
 
近づいてきて幸せだろうという、青ざめながらうなずいている
 
開かれたままの小さな手のひらを閉じてあげられないのね あなた
 
陸奥のしのぶもぢずり乱れつつさまようしかない海からの風
 
ひがしより少し遅れて水無月の夜はあけてゆく湿りを帯びて