未来8月号
花びらの行き場のなくて海原にくずれてしまう 岬はさくら
防潮堤に立つひとがいる健やかな春のおわりの凪のさへとおく
しおみずに真水は顎から漬されてそのしおみずになるまでのみず
伸び上がるクレーンは運河に傾ぎつつつり上げられている白い空
原っぱに倒されている自転車の腰のあたりが生あたたかい
星のない夜には犬が安らかでありますように 冷えた遊具の
もうすぐに眠りはくるから見ないから釦のとれているカーディガン
おたがいの名前を覚えているのだしこれから長い運河をつくる
桟橋の脚をしずめている水のそのぬくもりに腕さし入れる
淋しさは手のひらにある はつなつの陽を受けている小さな砂地