眠らない島

短歌とあそぶ

未来12月号

    黒揚羽                                
 
朝戸より床に吹きぬけゆく風をゆるくすあしに踏んでみようか
 
手のひらに掴もうとして黒揚羽 ひかりの裏にいってしまった
 
裏側はひぐらしの谷なんでしょう硬貨をいれる細長いあな
 
気の強い西陽に好きにさせている夾竹桃のようにあなたを
 
夜もすがらほぐされてゆく悦びの至りの月に雲は来ていた
 
やわらかく猫に咬まれている臑にうすく目覚める 未明だろうか
 
降りてきた鴉の脚が掴もうとしてほのじろいフェンスのふるえ
 
汗ばんだ背中に砂をくっつけて夕陽はどうにか傾いている
 
親指のちからを抜いてあげようか ねむいねむたいツクツクボウシ