2011-12-12 未来11月号 日記 #練習用 みずうみだった 白線に触れようとする夏草の穂をよけながら自転車を漕ぐ ありえない記憶のなかで仰向けに雨に打たれるみずうみだった 中陰をしるす葉書を置いたまま死んでしまった人といる夏 届かない席にいるのでヴィネガーをかたわらにいる男に回す 硝子器のベビーリーフにふりかかる鱗のにおう厚切りの風 一艘のあわれな小舟などはない 蘆辺という制度はあったはずだが おまえは榎木だろう 日盛りにあおざめながら黙っているのは 道ばたのあざみの花はあぶないなあ ドルの投げ売りされる真夏日 対岸の倉庫のうえに夕焼けを撒き散らしている 素知らぬ顔で きりぎしの踵をつかんでいる海は夢をみるのが怖いのだろう